贈る
成人して2年経ち、迎えた父の誕生日。
誕生祝いとして景色の綺麗なレストランに招待した。
落ち着かない様子で食事をする様子は、今まで見てきた父親の姿とは少し違って見えた。
我が家はイベントがあるとプレゼントを贈りあう家庭だった。
母の日、父の日、誕生日、クリスマス…
プレゼントを貰って育った私は、貰うことも、贈ることも普通のことだった。
幼い時は習慣に只習っていたが、歳を重ねるにつけ、そのことに意味を見出すようになった。プレゼント選びには、少しの面倒臭さと、相手が喜びそうなものを想像する幸福があった。
食事中、父は私に言った。
「俺は流れでプレゼントを贈っていただけで、別に贈りたいと思っていたわけではない」
私は今まで何を貰い、何に喜んでいたんだろうか。
正直にいうなら、父の本音を聞いてショックを受けたのかもしれない。
贈る喜びを教えてくれた人間が、本当は贈る喜びを感じていなかったのか。
苦しまぎれに質問した。
「じゃあ、プレゼントを貰うことは。貰ったら贈らなきゃいけないし、面倒?」
「貰ったら、それは、嬉しいと感じる」
そう、と返して切っていたチキンを頬張った。
少し塩辛かった。